婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

「いいえ、ありがとう。指輪は見つけたわ」
 そう言って拾った指輪を手渡すと、彼女は何度もお礼を言い、頭を下げる。彼女が立ち去ったあとにほっと息を吐くと、またサルジュに抱きしめられた。
「手を痛めていないか?」
「……はい。あの日、やりたかったので少しすっきりしました」
 図書室の前で待ち伏せをされて、引っ叩いてしまおうかと思ったことがある。ようやく実行できた。
「そうか。できれば私も殴ってやりたかったが」
「え? サルジュ様がですか?」
 そんな姿は想像もできない。
 驚いて目を丸くするアメリアの黒髪を、サルジュはさらりと撫でる。
「そうだ。私からアメリアを奪おうとしたのだから」
「…………」
 落ち着こう、とアメリアは自分に言い聞かせた。
 きっとサルジュは、自分の研究に必要な助手を奪われそうになったことに憤っているのだ。
 都合の良いように解釈してはいけない。
「あの……」