婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

「だから迎えに来た。僕と一緒にベルツ帝国に行こう。向こうでは今、土魔法と水魔法を使える者を切望している。水魔法を使える君と一緒に行けば、爵位を与えると約束してくださった。向こうでやり直そう」
 ベルツ帝国と聞いて、アメリアはびくりと身体を震わせる。
 大陸の南側には険しい山脈があり、その向こう側に巨大な帝国がある。周辺の国とはほとんど交流がないため、詳細は謎に包まれていた。
 屈強な軍隊と広大な領土を持っているが、かの帝国には魔法の力がほとんど存在しないと言われていた。
 だからこそ魔法の力を強く欲し、第三王子のユリウスの婚姻に口を出し、十年ほど前には幼いサルジュを連れ去ろうとしたのだろう。
 パーティ前に王太子アレクシスが言っていた、ベルツ帝国の人間が入り込んでいるかもしれないという忠告を思い出す。
 リースはその帝国と手を組んだのか。
「……どうして私が、あなたと行くと思うの?」