だが残念ながら、水魔法はそれほど重宝されているわけではない。水遣りなど、手を掛ければ誰でもできる仕事だ。
 本当に必要なのは、土を豊かにして実りをもたらす土魔法である。
 魔力に満たされた農地では、作物は他とは比べ物にならないほど早く成長し、大きさも味も極上のものとなる。
 レニア伯爵の当主は、代々その土魔法の魔導師だった。
 だが曽祖父が子爵家の令嬢と恋愛結婚したのち、水属性を持つ子どもが生まれるようになってしまった。
 曾祖母は、優れた水魔法の魔導師だったのだ。
 ふたりの間に子どもは何人も生まれていたが、すべて水属性の魔法しか使えなかった。
 曽祖父と曾祖母はそれが原因で口論となり、のちに離縁してしまったと聞く。
 大恋愛の末に結ばれたふたりの結末としてはあまりにも寂しい。
 さらに曽祖父は親戚中から、土魔法を失わせた当主として今も嘆かれていた。