婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

(そういえば私、初対面でサルジュ様と踊ったわ。それに、足を怪我して抱きかかえていただいたことも……)
 あのときはサルジュの身分に恐縮していただけだった。
 でもこうして思い返してみると途轍もなく恥ずかしく、それでも得難い経験だった。
これからもサルジュの研究を手伝うことはあるが、あんなふうに触れ合うことは二度とないだろう。
ベッドに寝転んだまま、天井を見上げて溜息をつく。
それは今までのように悲しみに満ちたものではなく、少しだけ切なさを含んだものだった。
 アメリアはその日のうちに父に手紙を書き、起こったことをすべて報告した。
 おそらくリースとの婚約は、このまま解消となる。
 アメリアは父の指示に従うだけだが、たとえアメリアに瑕疵がなくとも、ここまでの騒ぎになってしまったのだ。新しい婚約者を見つけるのは難しいかもしれない。