婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

「そうか。でも、もう開始の時間だから、君の婚約者は会場の中で探したほうがよさそうだ」
 そう言って、アメリアに向かって手を差し伸べる。
「会場までエスコートしよう」
「え、でも……」
「女性をひとりで入場させるのは忍びない。私に婚約者はいないし、君の婚約者も、私なら変な勘違いをすることはないだろう」
「……はい。お願いいたします」
 格上からの誘いを断るわけにはいかない。
 アメリアはおずおずと彼の手を取った。
 農作業をして荒れた自分の手とはまったく違う、滑らかな手触り。歩く姿でさえ洗練されていて美しい彼は、いったい誰なのだろう。
 失礼のないようにしなさいと、母から学園に入学する前に在籍している高位貴族と王族の存在は教えられていた。
 第三王子殿下と公爵家令息は三年生。
 公爵家令嬢と第四王子殿下は、リースと同じ二年生である。
 アメリアと同じ新入生には、侯爵家令嬢がいるらしい。