婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

「何を言っているの? 私はリースの愛なんか必要としていない」
「だが、土魔法は必要だろう? そのためにレニア伯爵は、サーマ侯爵家に多額の金を払って僕を買ったのだから」
「ひどいわ。お金でリースを縛り付けるなんて」
 セイラがリースに抱きつき、非難の目をアメリアに向ける。
 レニア伯爵家が元々優れた土魔法の魔導師であったこと。これが先々代当主の結婚によって失われたことは、有名な話だ。
 金の力で愛するふたりを引き裂いたのか、と誰かが呟き、それをきっかけに周囲がざわめいていく。
 何も言えなくて、アメリアは唇を噛み締める。
 父が土魔法にこだわっているのは本当のことだ。
 さらに父は、リースとの婚約のためにサーマ侯爵家に多額の金を支払っている。
 けれど貴族社会ではよくあること。むしろ向こう側が婚約を盾に、資金提供を願ったのだ。