婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 知らないふりをしてくれたらいいのに、どうしてわざわざ恋人と一緒にいるときに、自分に声をかけてきたのか。
また何か企んでいるのかもしれない。
もう彼に利用されたくない。顔を見るのも嫌だった。
 アメリアは立ち止まらず、そのままもうひとつの入口から図書室の中に逃げ込もうとした。
「待ってくれ!」
 手首を掴まれ、嫌悪に肌が粟立つ。
 こんなにもリースが嫌いになっていたことに、自分でも初めて気が付いた。
 彼に好きな人ができてしまったことを責めるつもりはない。
 人の気持ちを縛ることはできない。
 でも十年もの長い間、婚約者だったのだ。
 せめて誠実であって欲しかった。
 もし彼がきちんと理由を話してくれていたら、アメリアだって承諾した。リースの幸せも願っただろう。
 それなのに。