婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 もう言葉もなく崩れ落ちる彼女に、駆け寄る者は誰もいなかった。
「他の三人の処分も、後ほど言い渡す」
 ユリウスは最後にそう言うと、もうエミーラには目を向けることもなく、護衛を連れて教室を去った。
 だが彼が立ち去ったあとも、動く者は誰もいない。
 エミーラと三人の令嬢の泣く声だけが、静まり返った教室に響き渡った。
「アメリア」
 誰もが動けずにいた中で、最初に行動したのはサルジュだった。
 壇上に残されたままのアメリアのバッグを手に取ると、席に座ったままのアメリアの名前を呼ぶ。
「王城に行こう」
「え? わ、わたしが王城に、ですか?」
「そうだ。エスト兄上なら、きっとこれを復元できる」
 第二王子エストは、風魔法の専門家だ。
 濡れた資料を乾かしてくれたマリーエも風魔法を使っていた。さらに上位魔法が使えるという彼であれば、たしかに復元できるかもしれない。