相思相愛

 あの日から1ヶ月経ったけれど葵くんと帰りにあったのはあの一回だけだった。避けられているのかと思ってしまう。まぁ無理もないだろう。隣同士の部屋に住んでるだなんてもし誰かに見つかりもしたら大変なことになるのが容易に予想できる。
「行ってきます」
「香織!お弁当お弁当」
 つま先をトントンとして扉に手をかけたとき後ろからお母さんが歩いてきた。
「忘れてた。ありがと」
 左手にお弁当箱を持ち扉を開け、いってきますといい出ていった。
「行ってきます」 
 扉が閉まる音が2重に重なった。それと同時に低い声が右耳に届いた。あまりにもここで見ないからてっきり隣りに住んでいることを忘れてしまうところだった。
「お、おはよ」
 不格好な笑顔で手をふると、冷たい目で見られてため息まで吐かれた。
「よっ」
 肩くらいまで手が上がってギリギリ聞こえる声量だった。葵くんには聞こえただろうか。
「ねえ、せっかくだしさ、学校一緒に行かない?」
 何にそんなに勇気を持つ必要があるのかわからないけど力が入り、頑張ってそう聞いてみた。すると背中を向いていた葵くんがピタリと止まった。
「どうせ同じ道だろ」
 なんだろう。私嫌われてるのかな。返す言葉はあったけれど返そうとは思えなくて口に封をした。
 なんとなくで近づく気にもなれず駅まで一定の距離を開けて来た。駅のホームに行くと葵くんは近くのベンチに腰を下ろした。そして本を開いて読み始めた。わたしは少し離れたところに行って電車を待った。わたしは予め電車で読む予定だった本を取り出した。これは高校に入ってすぐに買ったもの。もう半分くらいまで読んだけれどストーリーが詰まっていて面白い。