しづき



「意外とわかりやすいねー汐月は。そっか、昨日のキョーレツな噛み跡気にしてくれてたんだね?」


「…そ、れは」


「ふふ、やっぱぼくの鎖骨にはキスマークよりも噛み跡付けたいの?いーも、何個でも。骨が見えるまで噛んでくれたっていい」



とても、とても嬉しそうに



ほらほらと鎖骨を近づけてくる。



私の名前が刻まれたその部位は、やけに妖しさを漂わせていて。



羞恥心と悔しさでいっぱいの私は逃げるように顔を背けた。



「し、白なんてもう知りませんっ」



へんたい、意地悪、へんたい



勢いよく立ち上がり、リビングの扉へ歩き出す。



それでも、私に執着した男が逃がすわけもなく腕を掴まれてしまう。



「汐月、どこいくの」


「ここから出ていきます」


「どーやって」


「窓割ります」


「あのね、この家の窓はすべて特殊なガラスを使用してるんだよ。汐月の細くて綺麗な腕には割れないよ」


「……」



うそ、そんなの……



突然の絶望が襲いかかった。