それでも 「汐月、しづき…」 白は私を呼んだ。 愛おしく、甘く。 長い腕が私の背にまわされた。 とん、とん ひどく優しいてのひらが、背中に心地良いリズムを生み出す。 石けんの匂いがふわり香る。 じんと鼻先が痺れて、我慢していたものが溢れそうになった。 「だいじょーぶだよ、汐月」 私のためだけにあるような、やわらかくて愛の滲んだ声が心を撫でる。 ポタッと目からしずくがこぼれた。 あったかい。 ついさっきお風呂に入っていたというのに。 比べものにならないくらい、温かかった。