しづき







「…しつれいします」




遠慮がちに中へ入る。



エプロン姿の男は見た目以上にテキパキと動いていた。



なんか意外だな…



料理なんか面倒くさがってやりそうじゃないのに。




「あ、汐月。朝ごはんできて…」




私の姿を見た男は、大きく目を見開いた。



そして、とっさに崩れ落ちる。




「えっ、ちょっと…」


「やばい…死にそー…」




男は掠れ声を出しながら膝をつく。



なにかに悶えているようだった。




「汐月、やばい、ぼく、死ぬ」


「どうしてですか…」



「汐月…かわいすぎ」




男は手で顔面を押さえながら、よろよろと立ち上がった。