しづき






「………」



静寂を取り戻した部屋。



音を立てずに窓を閉める。



外からの風がなくなって、漂うのは石けんの匂いだけ。



感情を表すとするなら「無」



すべてを知った今、取り乱す必要はなかった。



そんなことをしたって白の状態は変わらない。



変わってなんてくれないから。



……あぁ、どうしていつも私は変なときに冷静なんだろう。



白に連れてこられた時だってそうだった。



ほんと、かわいくない女。



泣き叫んだっていいはずなのに。



「そういえばあの人…
時間が無いって言ってたっけ」



もうじき白が帰ってくるかもしれない。



戻らないと…



そう思い、踵を返せば

机に置かれる写真立てが目に入った。