中は静かだった。
暗い室内には、窓からの頼りない月明かりだけが差し込んでいる。
夜風に靡くカーテン。
きっとこの部屋の窓から侵入したのだろう。
そしてめいっぱい、石けんの匂いがした。
「あの…灯りは」
「付かねぇ。あいつが壊したんだろうな」
男が一歩踏みだした先には机があった。
見渡すと、この部屋には机と窓しかないのがうかがえる。
「見ろこれ」
男が手に取ったのは、見覚えのある一台のスマホ。
「!、それ…私の」
「やっぱりそうか。きっとスマホにすら嫉妬したんだろうなぁ、あいつ」
男は静かに笑いながら機械の表面を撫でた。
「あ、取るなよ。
あいつにバレたらぶち犯されるぞ?」
「ぶ、物騒なこと言わないでください」
そう言いつつ、私は改めてスマホに目をやった。
ずっと考えてなかったけど、誘拐されてから私の荷物はすべて白のもとにあるんだよね。
当時はたしか下校中で…スクールバッグを持っていたはずだから。
「中身…見られてるかな」
「見られてるに決まってんだろ。
汐月のことは全部把握済みだろうな」
私のつぶやきに笑う男。
他人事だからって、ぜんぜんおもしろくない。



