しづき






「まずはじめに、ぼくは汐月を誘拐した。それは認めるよ」


「……」


「誘拐した理由は、誰よりも汐月を愛しているからだよ」





ひときわ甘い声に視線を滑らせる。



男も私をじっと見ていた。



その瞳はやはり熱っぽい。





「……汐月は死にたがってたでしょ」


「…っ!」


「学校ではいじめに遭い、親は海外赴任で家庭にも温もりはなく。相談する相手もいなくて、ひたすらに苦しい日々。そんな毎日に疲れ果ててたんだよね」





唖然とした。



…この人、どうしてそんなことを知ってるの?



誰にも言っていない。
言う相手なんかいなかったのに。



思い出したくもない、人を人と思わない人間からの理不尽な攻撃。



面倒だと逃げる担任。



何ヶ月も音沙汰無しの両親。



そんな人間に囲まれて、いつも死にたくてしょうがなかった。