しづき



私は上体を支えながら起き上がる。



「汐月…動いちゃだめだよ…」



眉を下げた彼のことを抱きしめた。



白の動きがぴたりと止まる。



「白…ごめんね」



あぁ、前もこんなふうに謝った気がする。



「な、なんで汐月があやまるのさ…」

「さぁ、わかりません」



まわりにはいつも私のことを攻撃する人間しかいなかったから。



見ていてつらくなるくらい献身的な姿勢の白は、どうしても私の胸を痛くさせて。



こうして抱きしめたくなってしまうんだ。



ふわふわの頭を撫で、怯える大きな背中をそっと離す。



「私は大丈夫ですよ。だから泣きそうな顔しないでください」



理不尽に毎日心も体も壊され続けたあの日常に比べたら、こんなもの。



白の頬に触れる。
今にも消えてしまいそうな美しい男は、縋るように私の手のひらへと肌をあずけた。



「私、うれしかったんですよ。白が目を覚まして、名前を呼んでくれて」


「え…」


「だから白が豹変した時は驚いたし怖かったですけど…。結果的にこうして元通りになれたんですからもういいです。いいんです」


「…汐月……ごめん、ありがとう」



白はしゅんと耳を下げた大型犬のように、私にすりすりと頭をうずめた。