私は上体を支えながら起き上がる。
「汐月…動いちゃだめだよ…」
眉を下げた彼のことを抱きしめた。
白の動きがぴたりと止まる。
「白…ごめんね」
あぁ、前もこんなふうに謝った気がする。
「な、なんで汐月があやまるのさ…」
「さぁ、わかりません」
まわりにはいつも私のことを攻撃する人間しかいなかったから。
見ていてつらくなるくらい献身的な姿勢の白は、どうしても私の胸を痛くさせて。
こうして抱きしめたくなってしまうんだ。
ふわふわの頭を撫で、怯える大きな背中をそっと離す。
「私は大丈夫ですよ。だから泣きそうな顔しないでください」
理不尽に毎日心も体も壊され続けたあの日常に比べたら、こんなもの。
白の頬に触れる。
今にも消えてしまいそうな美しい男は、縋るように私の手のひらへと肌をあずけた。
「私、うれしかったんですよ。白が目を覚まして、名前を呼んでくれて」
「え…」
「だから白が豹変した時は驚いたし怖かったですけど…。結果的にこうして元通りになれたんですからもういいです。いいんです」
「…汐月……ごめん、ありがとう」
白はしゅんと耳を下げた大型犬のように、私にすりすりと頭をうずめた。
そもそも自分を傷つけようと選択したのは私だ。
白はまったく悪くない。
とはいえ本気で私を殺そうとした白の目は全身が凍るほど怖かった。
優しい人ほど怒らせてはいけないのだと、身をもって知った。
すると、顔を上げた白が怪訝そうな表情を浮かべた。
「ねぇ汐月。さっき、ぼくが目を覚まして嬉しかったって言ったよね?」
「え…はい」
「それってどーゆーこと?」
どーゆーこととは?
「どうって…白、5日間も目を覚まさなかったじゃないですか」
答えれば、白は驚いたように目を丸くする。
「うそ…5日間も?」
「はい。呼んでも起きなくて。ずっと眠っていましたよ。心配したんですからね」
「………そっか」
白は小さくつぶやくと、口をつぐんでしまった。
なんなのだろう。



