しづき



「しづき」



くるんと、体を反転させられる。



飛び込んできたのは、目が血走った白の顔。



まるで獲物を前にした獣。
私の知っている白はどこにもいなかった。



狂ってて、へんたいで。
それでも必ず根底には優しさがあった白。



そんな彼の面影は…どこにもない。



「白…しっかりしてっ」

「汐月、愛してる」



私の首に、やわらかく手がまわされた。
その感触にゾッとする。



「ほら…汐月も。死ぬんだから一緒に…」


「やだ、やだ…っ!」


「やだじゃないよ。一緒に死ねば、永遠にそばにいられるよ」



にっこり笑う白。



狂気に満ちた美しい双眸は、真っ黒だった。