しづき




振り返る間もなく、力強い二本の腕に抱きしめられる。



ぎゅうぅぅと私を壊してしまうほどの抱擁。



久しぶりの体温の中、大好きな石けんの匂いが私の心を絡めとっていく。



「し…」


「なにしてんの、ばか!!!」



震え混じりの声が、私を遮った。



「ぼくが寝てる間に逃げよーとしたの?ぼくのこと嫌いになった?ねぇ!なにがダメだったの?!」


「し、白…」


「なんでもするよ、汐月。ぼくはきみのために生きてるんだ。汐月だけしか欲しくないし、要らない。好きだよ、愛してる…愛してる…」


「白、おちついて…っ」


「うるさい!いやだ!逃がさない…どこにもあげない!汐月はぼくだけのものなんだ!」



白の気が動転してる。
まったく冷静になってくれない。



どんなに声をかけても体をよじっても、そんなの全然意味がなくて…



「ぜったい逃がさない。逃がすもんか。
それでも逃げる気なら、今ここで汐月と死んでやる」



だんだん声色が低くなり、本気さが加速していく。



止まらない白の言葉に、私の体は恐怖で震えはじめた。