しづき



でも、きっとそれだけ。



私を待っている「人」は誰もいない。



なんて悲しくて残酷な現実だろう。



そしてふと思う。



今なら逃げられるかもしれない。
白が眠っている今なら。



心ではそう分かっているし、さっさと逃げてしまうのがいいんだと思う。



けど、なのに


私の体は動こうとはしなかった。



何故かなんて、そんなの自分でも信じられない。



ひとりぼっちの世界に戻るのが怖いのではなく



眠っている白をひとり置き去りにしてまで、この世界から逃げようとは思えなかったからだ。



時折見せる、寂しげな瞳。



彼にも私と同じように孤独な瞬間があったのかもしれない。



根拠は無いけど…そんな気がした、



少し進んで、取っ手に触れた。



冷たい鎖が絡みつく、頼りのない取っ手。




私はそれを少しだけ回してみた──