しづき



「汐月、これだけは忘れないで」


「……」


「汐月は惨めなんかじゃないよ。人を傷つけることしか知らない怪物と、たったひとりで戦った強い子」



強い、だなんて。
言われたことがなかった。



なに一つやり返すことすらできない弱いものだと、そう思い続けていた。



「そんでブスじゃない。汐月は世界一かわいーよ。人すら殺せそうなかわいさだ。だからさ、あの男は目がおかしいんだよ、目が」



白は今まででいちばんの不機嫌顔を見せた。



きっと私の顔を貶されたことが最も癪に障ったのだろう。



その様子におもわず吹き出してしまう。



「汐月…?」


「ごめんなさい、おかしくって…ふはっ」



ここに誘拐されてきて、はじめての爆笑。



白は声を出して笑う私を見て、不思議がっていた表情を優しく緩めた。