「うん、東京。転勤になったんだ」 「……転勤……?」 「そう。夕方の飛行機で発つんだ」 お冷を飲みながら、増永さんは淡々と話す。 あたしは、笑顔を保つのに必死で……。 それ以上の言葉が出てこなかった。 「ずーっと、引越しの準備やら引継ぎやらで忙しくてさ」 カチリ、と冷たい音を立てながら、増永さんはジッポでタバコに火を点ける。 あぁ、そうか。そうだったんだ。 それで、ここにしばらく来なかったんだ。