いつも手ぶらで来ていたのに。


今日の増永さんは、黒い大きなボストンバッグを持っていた。



「パスタランチ」



工事が終わったカウンター席。


いつもの居場所に戻った増永さんは、いつものパスタランチを注文する。




「どこか、行かれるんですか?」



心を入れ替えたあたし。

素直にそう聞くことができた。


久しぶりに会えて、嬉しいはずなのに。

胸には大きな不安の渦が漂っている。