彼の指定席



「あのぅ……。ちょっといいですか?」



それまで黙っていた沙織が、おずおずと手を挙げる。



「店長さん、名前、何ていうんですか?」



ニッと笑いながら彼に聞く沙織。


そう。

あたしはまだ、彼の名前を知らない。



沙織にもそのことを話していたから……


沙織はあたしをチラリと見て、にやりと微笑んだ。



「増永です」


「下の名前は?」