――あたしは、彼の名前を知らない。


知っているのは、目の前のゲームセンターで働いているということだけ。



「……はぁ……」



待ち長いなぁ……。


お客様が帰ったあとのテーブルを拭きながら、溜息が自然とこぼれる。


ちらりと窓の外を見ると……。



――来たっ!



こちらに向かって道路を渡ってくる彼の姿。


あたしは急いでテーブルを拭きあげると、レジの方に向かった。