俺はそんな気持ちを隠すために小さく「うー……。」と声を漏らす。

 彼女はそれには気づかないようで、まだ泣いている。

 相当ため込んできたんだろうな、なんて思いながら俺は彼女が泣き止むまでそばにいた。



「珠洲島君……ごめんなさい……。」

 泣き止んで早々、頭を下げて謝ってくる風音さん。

 俺は慌てて頭を左右に振って否定する。

「ううん、大丈夫だよ。」

 そうやって笑顔を向けると、彼女は一瞬驚いた後「ありがとう……。」と控えめに言ってきた。

 ……っ、ヤバいかも。

 好きだと自覚する前も可愛いと思っていたけど、自覚してからは可愛さが増した気がする。

 真っ赤になっているであろう顔を隠すために俺は片手で口元を覆う。

 その時、こてんと首を傾げて「どうしたの?」と聞いてくる。

 あぁもう、破壊力がありすぎる……。

 俺は気持ちを紛らわすために風音さんにこう聞いた。

「風音さん、授業戻れそう?」

 そうやって言うと、小さく肩を震わせたけど笑顔を取り繕って「も、戻れるよ……。」と言った。