冷酷少女の複雑な恋模様

「……っ、うっ……。」

 静かに涙を流し、俺の胸に顔をうずめる風音さん。

 俺は彼女の頭に触れて、よしよしと撫でる。

 微かに震えていて弱い力ながらも俺のジャージを掴んでいる。

 なんだか……意外だ。

 風音さんみたいな強い人が、こんな風に泣くなんて。

 そう思ったけど、もしかしたらこれが本来の風音さんなのかもしれない。

 みんなの前では強がっているだけかもしれない。

 だからこそ、俺に弱い部分を見せてくれたのが意外で……嬉しくもあった。

 その時、俺は自分の中にある気持ちがはっきりと分かった気がした。

 きっと俺は……風音さんが好きなんだ。

 だから彼女の言動に一喜一憂したり、彼女のことを悪く言われると放っておけなくなるんだ。

 多分、この気持ちは前からずっとあったものだと思う。

 それは……俺が彼女の優しさに触れてから。

 下心がなく純粋で、他人のことを優先してしまう彼女に。

 でも、そう意識してしまうと急に恥ずかしくなってきた。

 何気に今、風音さんが俺の腕の中にいるって……凄い恥ずかしい。