「……うっ……。」

 後ろに倒れこむように、風音さんがよろける。

 下唇を噛んで、必死に何かをこらえているような表情になる彼女。

 それが、俺には耐えられなくて思わず飛び出していた。

「ねぇ……何してるの?」

 地を這うような、さっきよりも低い声が出て威圧する。

「すっ、珠洲島君……何で、ここに……。」

 女子生徒たちが顔を青白くさせながら俺を見てくる。

「こ、これは違うの……。」

「ちょ、ちょっと風音さんに用があって……。」

「体が当たっちゃったのよ……!」

 そんな戯言が聞こえてくるが、俺はその言葉を全無視する。

 全部見てたのに、今更言い訳なんて聞きたくない。

 俺はゆっくりと風音さんに歩み寄る。

 風音さんを隠すようにして、俺は女子たちに言い放った。

「女の子同士でも、暴力はダメだよ。それに……。」

 俺は言葉を一旦切り、風音さんのほうに視線を動かす。

 風音さんは何かを思い出しているような、そんな表情を浮かべていた。

 でも……その顔は悲哀に満ちていて、こんな顔をさせた女子たちに向き直った。