「おい!無視すんなよ!」

 そう言いながら一輝も速度を上げる。

 何気に早いんだよな、一輝……。

 ていうか……。

「なんで一輝、俺と並走してるの?」

 さっきから俺とばっかり走ってて、全然前に行かない。

 こいつなら俺より早く終わるだろうに……。

「お前、速すぎなんだよ……!」

 一輝は何故か、聞いたことと全く噛み合わないことを言った。

「速くないと思うけど。」

 そう言ってみるけれど、「いいや、速い!だって見てみ?後ろ。」と言われ、一瞬だけ振り返ってみた。

 うわ、みんなまだあそこなの……。

 そう思うほど俺たちとの距離が離れていた。

「だから言っただろ。いつの間に速くなったんだよ。」

「知らない。」

 本当に知らないから、俺は簡潔に返してまた走ることに集中した。



「はぁ~、終わった~!」

 ゴールしたと同時に転がり込む一輝。

 俺も息を整えるように深呼吸を繰り返して落ち着かせた。

 タイムは前測った時よりも格段に速くなっていて、俺が一番驚いている。