ふと振り返ってみてみると、その人たちはまだポカーンとしていた。

 心ここにあらずって感じで。

 俺はそれを気にしないようにして、一輝のところに戻る。

「お前、あんな風に怒るんだな。」

 そう言われてから気づいた。

 俺、怒ってたんだ……。

「お前が怒ってるの、初めて見たかも。」

「確かに……。」

 俺はあんまり怒ったりしないから、そうやって公の場で怒りを露わにしたことはなかった。

 だけどさっきは……無性に腹が立った。

 なんか、風音さんが好き勝手言われてるのは……嫌だったから。

 そうやって考え込んでいると、一輝が「ふーん、ついにお前にも来たか……。」って呟いていた。

 何のことかさっぱり分からなくて聞こうとしたらチャイムが鳴ってしまった。

「やべっ、……環、さっさと行くぞ!」

 俺はさっきのことが気になったけど、後で聞こうと思ってグラウンドに向かった。



「あっつー、なんでこんな夏日なんだよー!」

 俺の隣で愚痴を零しながら走っている一輝。

 うるさいなぁ、と思い無視を決め込んで俺は速度を上げた。