「もう……何で今思い出すの……。」

 出来ることなら、この記憶は消し去ってしまいたいものなのに。

 私は頭を押さえながら、珠洲島君のほうに視線を動かす。

 相変わらず気持ちよさそうにスヤスヤと寝息を立てて寝ている彼。

 よく寝るな、なんて思いながらもはぁ……っと息を吐きだす。

 少ししてやっと落ち着いてから仕事に取り掛かった。

 返却された本の整理と、本の状況だよね。

 私はそれらを一つずつ確認しながら処理を確実にしていく。

 事務作業をしているみたいで、少し楽しい。

 夕焼けが差す、静かな図書室で仕事を着々と終わらしていく。

 もうそろそろ五月になりそうだから、日が傾くのは遅くなったけど……まだ早い。

 私はそんな黄昏れられる時間が好きで、ここに訪れ本を読んでいた。

 つい最近のことまでだったのに、どうしても懐かしく思えてしまう。

 時間が経つのって……早いなぁ。

 まだ編入してから一か月も経ってないはずなのに、随分と長い時間いる気がする。

 ぼーっとそんなことを考えていたら、いつの間にか作業が終わっていた。