私は珠洲島君の背中を何も言えずに見送る。

 さっき、「何でもない。」と言われて胸がチクッとした。

 冷たくあしらわれたわけではないけど、私が踏み込んでこないように牽制された気がした。

 ……なんか、最近おかしいな、私。

 ここ最近は人に冷たくしなくなった気がするし、なんだか心が穏やかだ。

 もしかして、珠洲島君のあのふわふわした雰囲気に感化されたのかな。

 そう考えると、ふふっと笑みが零れる。

 だけどさっきの不安は簡単に拭えるものではなくて、私じゃ何も力になれないんだと改めて痛感した。

 私、珠洲島君のことばっか。

 頭の中が珠洲島君のことでいっぱいで、どうすればいいか分からなくなる時がたまにある。

 だけど、彼のそばにいると自然と安心できた。

 だから……少し寂しい。

 気分が沈んでしまったけど、私はパンパンと頬を叩き気合を入れなおした。

 こんなのでへこたれてたらダメだよね!

 私は「えいえいおー!」と一人で元気づけていた。



「なんか最近、珠洲島君変わったよねー。」