どうやったら、彼女のことを知れるの……。

　考えれば考えるほど、謎は深まっていく。分からなくなっていく。

　俺がどうしよう、と思っていると風音さんが口を開いた。

「真美さんは私を理解してくれている人だよ。お姉ちゃんも私のことを大切にしてくれる。だから、友達なんだ。」

　……また、だ。

　彼女は時折、こんな悲しそうで寂しそうで切ない表情をする。

　何かを思い出すように、懐かしい瞳をしながら遠くを見つめている。

　俺が彼女のことを知りたいって思うのは、迷惑？

　……でも、きっとそうだ。

　俺が余計なことを聞くから、変なことを聞くから、彼女が辛そうな表情をするんだ。

　なら……。

　――風音さんとは、しばらく距離を取ろう。

　俺のせいで風音さんが悲しむのは見たくない。

　俺は「やっぱり何でもない。」と返して、その場を足早に去った。

　その時に一瞬風音さんの表情が歪んだ気がしたけど、俺は気にしなかった。