「私は、そんなことない。人のことなんか全く考えてない。友達にさえ、初対面の人でも誰でも冷たくあしらうんだよ?そんな私は自分のことしか考えてないよ。これまでも今も。どうせ、これからも冷たくしていくんだと思う。」

 俺はその言葉に何も返すことができなかった。

 どういうこと?と聞いてみたかったけど、時すでに遅し。もう風音さんは小さくなってしまっていた。

 追いかけてでも聞いてみればよかったものを、それさえもできなかった自分が情けなかった。

 どうしてあんなに悲しい表情をするの?

 どうしてそんな人に冷たくするの?

 どうして……自分を否定するの?

 聞きたいことはたくさんあるはずだったのに、喉につっかえて出てこない。

 さっきの風音さんの悲しく、諦めているような表情が脳裏によぎる。

 ……胸がチクチクする。

 風音さんの表情を思い出す度に、こっちまで悲しくなってくる。

 ……俺、どうしちゃったんだろう?ほんとに。

 今まで人にこんなに興味が湧いたことなかったし、特定の人を気にかけることもなかった。