冷酷少女の複雑な恋模様

 そう聞くと、先生は乾いた笑みを零した。

「まだ来てないの。だけど心配しないで。他の人には昨日中に言ってあるから。だけど、朝改めて紹介するから心の準備はしておいてね。」

 自己紹介するだけなのに心の準備が必要って……私、どれだけ先生に心配されてるんだろうか。自己紹介くらい準備なくてもできるのに。

 そう思っていると、図書室のドアが開いた音がした。

「あ、風音さんおはよう。早いね。」

 ドアから顔を覗かせたのは珠洲島君だった。

 私も同様に挨拶をする。

「おはよう、珠洲島君。」

 珠洲島君は図書室内に入ってきて、私の近くにあった椅子に腰かけた。

「あー……眠い……。」

 彼は机の上で手を伸ばして、瞼をしぱしぱ動かしている。

「……眠たいの?」

 そう聞いてみると珠洲島君は首を小さく縦に動かした。

 そう言えば、珠洲島君いっつも眠たそうだな。

 単なる寝不足なのか、ロングスリーパーってやつなのかは分からないが、あんまり踏み込まないほうが良いよね。

 そうやって考え込んでいると、珠洲島君の寝息が聞こえてきた。