「じゃあ、また明日ね。珠洲島君。」

 私はそう言って帰ろうとしたんだけど……何故か珠洲島君に腕を掴まれていた。

「あ、あのー、珠洲島君?何で手掴んでるの?帰れないんだけど。」

 そう言ってみると、珠洲島君は一瞬顔を下げたかと思うとばっと顔を上げた。

「風音さんは……どうして人のことばっか考えてるの?」

 真剣な彼の瞳とぶつかる。

 人のことばっかり、かぁ……。

「私は、そんなことない。人のことなんか全く考えてない。友達にさえ、初対面の人でも誰でも冷たくあしらうんだよ?そんな私は自分のことしか考えてないよ。これまでも今も。どうせ、これからも冷たくしていくんだと思う。」

 私はそんな、最低な人だから。

 人と関わると、ろくなことがないって知ってるから。

 だから、冷たくするんだよ。

 私は一瞬、珠洲島君の力が弱まったのを見逃さなかった。

 その隙に彼の手から逃れる。

「じゃ、またね。」

 私はそう告げると、家に向かって歩き出した。



 今日もお姉ちゃんはバイトらしく、家にはいない。