私は今日何度目かの驚きの声を漏らし、彼を見つめる。

 どうして、なんて聞けず珠洲島君の意図を考えてみる。

 ……分からないや。

 そんな自分の不甲斐なさに打ちひしがれていると、珠洲島君が口を開いた。

「もっと、風音さんと仲良くなりたいなって思ってね……。ダメ?」

「…………うっ。」

 珠洲島君、男子で背が私より高いとはいえ女子より女子っぽいから、そう懇願されると……。

「わ、分かった。」

 イエスって言ってしまう……。

「ほんと?……良かった~。」

 ほっと胸を撫でおろしている珠洲島君を流し見て、自分のスマホを取り出す。

 珠洲島君と連絡先を交換し終えると、彼は踵を返した。

「じゃあね、風音さん。……また明日。」

 小さな声だったけど、確実に聞こえた言葉に驚きながら私も同じように返す。

「またね。」

 彼の背中が見えなくなってから、玄関の扉を開ける。

 まだお姉ちゃんは……帰ってきてないや。

 お姉ちゃん、バイト大変そうだしな……。

 私は自分の部屋に向かって、足を進める。