俺はその後、図書室のカウンターに座り、適当に暇を潰そうとする。

 その時、先生に「こっちへ来て。」と呼び止められた。

 図書室の外に一旦出て、先生が口を開いた。

「珠洲島君、お願いがあるの。」

「……何でしょうか?」

 先生からお願いなんて、珍しい。

 何だろうと思っていると、先生はちらっと図書室内を見てからこう言った。

「……風音さんと、仲良くしてくれないかしら。」

 ……え?

「風音さんと、ですか?」

 そう確認するように聞き返すと、先生は慌てて言い直す。

「無理にとは言わないけど……風音さん、あんまり友達いないようだし、先生にも本音を言ってくれないの。だから、この機に珠洲島君が風音さんと仲良くなってくれたらいいなって思ってね……。」

 そう、なんだ。

 俺はその言葉がちょっと意外だった。

 確かに風音さんは一見冷たい印象だったけど、言葉には温かみがちゃんとあって自分の意思をしっかり持っている人だ。

 だから、友達がいないのが少し信じられなかった。