なんだか、この子ってお人好し?

 そう思ってしまったのはきっと、俺の周りにそんな人がいないからだと思う。

 だから気になって、こんなことを口にした。

「君の名前、教えてくれない?……俺は珠洲島環。二年E組だよ。」

 俺の名前を聞いた瞬間、一人で頷いている彼女。

 その後、こっちに向き直って自己紹介してくれた。

「二年D組の風音澪です。」

 その時、俺はある事に気付いて指摘した。

「何で敬語なの?」

 さっきから……初対面の時もそうだったけど同じ年なんだからタメでいいのに。

 そう思いながら聞いてみると、空をふっと見上げてこう言った。

「癖です。」

 ふーん、癖ねぇ……。

 でも流石に同級生まで敬語だと、疲れるんじゃない?

「じゃ、敬語外す癖付けよう。」

 そう提案してみたものの、彼女……風音さんは顔をしかめた。

「え、嫌です。」

 あからさまにそう言われて、不思議に思う。

「どうして?」

 何でそこまで拒否するの?

 そういう気持ちを込めて風音さんを見ると、何かを思うような表情をしてから「敬語のほうが、いろいろと楽ですし。」と言った。