俺はその時、押し黙ってしまった。

 本気でそう思ってそうな声色に驚いたのと……彼女の笑顔があまりにも、可愛かったから。

 そんな俺を見て彼女はあたふたとしながら何かを呟いて辺りを見回している。

 その慌てようと言ったら……。

「ふふっ……慌てすぎ。」

 俺は自然と、笑みが零れていた。

 最近、笑うことなんてめっきり減ったから……久しぶりの感覚だった。

 しばらく笑いが収まらなかった俺は、落ち着くまで笑っていた。



「あの……昨日、大丈夫でしたか?」

「何のこと?」

 俺は彼女の言葉の意味がよく分からず、そう返す。

 俺の返答に少し考えこんだ後、改めて聞いてきた。

「昨日、私寝てたから……そのせいであなたが下校時刻に遅れたんじゃないかって思って……。」

 ……あぁ、そのことね。

「別に大丈夫だったよ。結構時間あったし。」

 直月と分かれてすぐに学校から出たから問題なく帰れた。

 まぁ、校門閉まっても飛び越えればいいだけなんだけどね。

 俺がそう教えると、彼女は心底安心したようにほっとした表情を浮かべた。