あ、でも編入初日は話しかけられたくなくて、結構投げやりに言った気がする……。

「癖です。」

 そう言うと珠洲島君はあっさり「じゃ、敬語外す癖付けよう。」と言ってきた。

「え、嫌です。」

 敬語のほうが何かと便利だし。

 そう反論すると珠洲島君はぷくーっと頬を膨らませた。

「どうして?」

 どうして、かぁ……。

 敬語が楽ってのもあるけど、私はあんまり人間関係を築きたくない。

「敬語のほうが、いろいろと楽ですし。」

 そうはっきりというと、珠洲島君は何かを思いついたようにこう提案した。

「なら、俺と話すときは敬語外して?」

 ……なんか、この人変だ。

 私はさっきから結構冷たく返してるはずなのに、一向に引かない。

 「お願い?」と言わんばかりの顔で見つめてくる珠洲島君についに私は降参した。

「わ、分かりました……じゃなくて、分かった。」

 ううっ……敬語外すのやっぱ慣れない……。

 ちゃんとタメで話した私に珠洲島君は満足そうに笑って「よし。」と言った。

 本当に……この人は何がしたいんだろうか。

 本気でそう思ってしまって私は考えながら図書室へと戻った。