冷酷少女の複雑な恋模様

 えっ……じゃあ今ここにはいないんだ。

 先生は極度の心配性なこともあってかさっきから落ち着かない様子だ。

 いないんだったら本でも読もうかな、と思ったけど流石に先生が可哀想だ。

「私、心当たりあるので呼んできましょうか?」

 私がそう提案すると先生は、一瞬目を見開いた後「お願いしてもいいの?」と聞いてきた。

「はい、もちろんです。」

 仕事を忘れるなんて、先生に迷惑かかるし!

 私は笑顔でそう言って、踵を返した。



『彼は大抵、図書室か写真部の部室にいますから行ってみてはどうでしょう?』

 さっきの結城先生の言葉を頭の中で思い出し、部室棟に向かう。

 写真部の部室ってどこだろう……。

 きょろきょろと辺りを見回して探してみるも、なかなかそれらしきものが見つからない。

 どうしようかな、と思い悩んでいると不意に声を掛けられた。

「あれ?風音先輩?」

 名前を呼ばれて、驚きながらも振り返る。

 後ろを振り向くと、そこには見覚えのある人が立っていた。

「間宮君?どうしてここに?」