冷酷少女の複雑な恋模様

 驚きを隠せない私に先生は優しく微笑んだ。

「彼は大抵、図書室か写真部の部室にいますから行ってみてはどうでしょう?」

 ……そうだ、昨日も図書室にいたよね。

 なら、分からないことがあったら聞いてみようかな。

 私は先生の言葉を聞いてそう思い、作業を終わらせた。



「では、気を付けて帰ってくださいね。」

「はい。失礼します。」

 作業と片づけを一通り終え、先生に一礼してから理科室を出た。

 昨日のことも謝っておきたいし、まずは図書室に行ってみようかな。

 私は少し考えた後、図書室のほうへと足を向けた。



「失礼します。」

 そう言って中に入ると、司書の先生がこちらを向いた。

 優しくて、本のことにとっても詳しい先生。

 たまに二人で本のことについて語り合ったりもしている。

 そんな先生だけど、なんだかそわそわしない様子だった。

「先生?どうしたんですか?」

 そう聞いてみると先生はちらっと窓の外を見てから、私にこう言った。

「まだ珠洲島君が来てないの。彼に限って忘れることなんてないはずなんだけど……少し心配で……。」