だけど姉さんは俺の気なんて知らず、さっさと俺を自分の部屋へと引っ張っていく。

「姉さん、話聞いてる?」

「……ふふっ。」

 笑みを零すあたり、話は聞いているが要望には応えてくれないようだ。

 そのまま姉さんの部屋に連れていかれ、鏡の前に座らさせる。

「さーって、やるわよ。」

「はぁ……もう勝手にして……。」

 きっとこれ以上何を言っても姉さんは聞かない。

 そう悟って俺は呆れながらそう言った。

「だったら遠慮なくさせてもらうわね。」

 姉さんはそう言って、ニヤッと意味深に口角を上げた。



「はい、できたわよ。」

 そんな声が聞こえて瞼をゆっくりと開ける。

 目の前の鏡にはさっきよりは女の子らしくなった自分の姿が映っていた。

 でも、だからと言って似合ってないのには変わりない。

「環、もういっそ女の子になっちゃえば?」

 まともだと思っていた玲姉さんだったのに……これじゃあ珠里姉さんと同じだ。

「そんなことは絶対にしない。……それより、さっさと澪に会わせてよ。」