もしかして……。

「環君、私何かしちゃった……?」

 恐る恐るそう聞いてみると、環君は一瞬驚いた表情になった。

「どうしてそう思うの?」

 その声はいつもと同じものだけど、とげがあるようにも感じてしまった。

 やっぱり、何か変……。

 私は心の中でそんなことを思い、思っていることを環君に言った。

「だってなんだか……環君が怒ってるみたい、だったから……。」

「怒ってる?……あぁ、まぁちょっと怒ってるかな。」

 私の言葉を肯定して苦笑いを浮かべた環君。

 やっぱり私、環君に嫌なことしたのかな……。

 そう思って謝ろうとしたけど、それは環君の言葉によって阻止されてしまった。

「まぁ俺が怒ってるのは珠梨姉さんに、だけどね。」

「え?」

 珠梨さんに、怒ってる?

「どうして?」

 驚いてそう聞くと、環君は口角を上げて私を見た。

 そのまま私をぎゅっと抱きしめる。

「こうやって、澪にくっついてたから。」

 ……あれ?次抱きしめるの私じゃなかったっけ?

 そうこっそり思ったけど、突然のことだったから言葉が出てこなかった。