冷酷少女の複雑な恋模様

 ほ、頬っぺたで良いよね……?

 そう最初は思ったけど、さっきの環君の言葉を思い出し私は唇にすることを決めた。

『無理しなくて良いよ……?』

 まるで私がキスできないなんていう言い方にどことなく苛立ちを覚える。

 私だってキスくらい……できるし……。

 強がっているのは分かってる。だけど舐められっぱなしは嫌だった。

 ……っ、いざするとなると、緊張が半端ない……っ。

 すると決めたは良いものの、いざやろうとすると恥ずかしさが……。

 そう思ったけど首を左右に振って自分に喝を入れる。

 やるって決めたことは最後までやらなくちゃ……!

 私はよし!と意気込んで、勢いに任せ環君の唇に自分のものを重ねた。

 ちゅっと可愛らしいリップ音が聞こえ、慌てて環君から距離を取る。

 ~~っ、は、恥ずかしかった……。

 自分からするのは恥ずかしくてふいっと環君から顔を逸らそうとした……けれど。

「澪、唇にするのは反則でしょ?」

 そんな声と共に環君に顔を固定される。

 環君は顔を真っ赤にしていて、私の瞳を真剣に捉えていた。