冷酷少女の複雑な恋模様

 その途端、二人だということを意識させられて口の中が乾いていった。

 な、何か話題を振らないと……。

 そう考えるけど何の話を振ればいいのか分からず、口を何回も開閉させる。

 環君はそんな私を見て、ふふっと笑った。

「澪、お願い聞いてもらおうかな。」

「へっ、今!?」

 ここでできることなんて何もないはずなのに、なぜ今になって言い出すのか。

 だけど聞かないと始まらないと思い、私はそのお願いを聞くことにした。

「お願いって何?私が出来る範囲なのでお願いね。」

 流石に無理難題は押し付けないでほしい、と考えながら環君の言葉を待つ。

 環君は私の言葉に一呼吸おいてから、悪戯っ子がするような笑みを見せた。

「澪からキス、して?」

 …………はい?

「き、キス……?」

 キスってあの恋人同士がやるやつ……だよね?

 そう理解するとぶわっと一気に顔が真っ赤に染まる。

「……っ、そ、それは……。」

「これなら澪もできるよね?お願い?」

 可愛らしくねだってくるような言い方に思わずうっと言葉に詰まったけど、できるはずがない……そんな恥ずかしいこと。