「……っ、可愛すぎでしょ。」

 顔を真っ赤に染めて玄関に入ってしまった澪にそんなことを思う。

 あんなの……誘ってるとしか思えない。

 あの時、澪が可愛すぎて勢い任せにキスしちゃったけど……嫌がられはしなくて安心した。

 むしろ……嬉しいとまで言われてしまって抑えなんてきかなかった。

「はぁ、あれは小悪魔だよ。」

 名残惜しくも帰路についてそんな言葉を零す。

 無意識に可愛いことばっかりしてくるから……心臓がもたない。

 澪は自覚してないし、あの鈍感には伝わらないのかもしれないけど。

「うわ、恋に現抜かした顔してる。」

 いつぞやの言葉が聞こえて顔を上げると、目の前に珠梨姉さんが仁王立ちしていた。

 ……あれ、いつの間に帰ってきたんだろう。

 澪のことばっかり考えてたから全く気付かなかった。

 そんな俺を見て珠梨姉さんはため息を吐く。

「……で、あの子とはどうなったの?」

 姉さんが指す”あの子”とはおそらく澪のこと。

 珠梨姉さんには澪が冷たくなった後のことを話してないから不思議がって聞いてくる。