冷酷少女の複雑な恋模様

「どういたしまして。」

 笑顔でそう言う環君に無意識に胸が高鳴る。

 ……重症だな、これ。

 暑くなった頬をパタパタとあおいでいると、急に頬に柔らかい感触が走った。

「今日はこれで我慢する。」

 そう言って悪戯っぽく笑った環君。

 ……ま、まさか……。

「キス……した?」

 一瞬のことだったから分からなかったけど、感触は確かにあった。

 環君は嬉しそうな笑みを浮かべたまま、「どうだろう?」とはぐらかす。

 私が気付いてないと思ってしてくるなんて……もう無理!

「環君じゃあね!」

 恥ずかしさに耐えきれなかった私は、急いで玄関の扉を開けて家の中に入った。

 ドアを閉めてからふぅ……と息を吐く。

「環君、よくできるな……。」

 そんな言葉は拾われることはなく、その場に消えて溶けていった。