冷酷少女の複雑な恋模様

 それが急すぎて思わず目を閉じる。

 ……っ、また、だ……。

 さっきと同じような感覚がやってきて、唇が塞がれる。

「……た、環君、不意打ちは……ダメ……っ。」

 我慢できずにへなへなとその場に座り込んでしまった。

 急にキスなんか、恥ずかしすぎる……。世のカップルはこんな恥ずかしいことをしているんだろうか……。

 うーと恥ずかしさを紛らわせるために声を出すも、何の効果もない。

 そんな私を見て環君はおもむろに私のことを持ち上げた。

「……へっ?」

 驚いて固まっている私をよそに環君はふふっと笑みを零す。

「澪、その様子じゃ歩けないでしょ?俺が運んであげる。」

 清々しいほどの笑顔で言われ、反論しようと口を開こうとした。

 が、実際腰が抜けてしまったので歩けるか、と言われれば無理だ。

 こんな公衆の面前で抱っこはきついところがあるけど、帰れなくなるよりはマシ……と言い聞かせ、「お願いします……。」と言った。



「環君、その……ありがとう。」

 家まで無事に送り届けてもらい、お礼を伝える。