うーとちょっと不満気味な私は、環君の笑顔の裏に隠された意地悪な笑みには気付かなかった。



 仲直りしてからというもの、とにかく環君が甘い。

 前も甘かったけど、今はそれの比にならないくらい……甘い。

「澪、可愛すぎ。」

 隙あればそんな甘いセリフも言ってくるし、油断なんてできない。

 嬉しい、嬉しいんだけど……流石に恥ずかしい。

 だけどまだそれだけなら良かった。

 ……でも、ちょっとこれは恥ずかしいを越える。

 その恥ずかしいを越える問題はと言うと……。

「おい!風音さんと珠洲島が付き合いだしたって本当か!?」

「あたし、珠洲島君狙ってたのに……。」

「だけどよく珠洲島君も風音さんと付き合おうと思ったよね。」

 ……私と環君が付き合いだしたということが校内に流れてしまったということ。

 どこから流れ出したのかは分からないけど、事実だったから何も言えなかった。

「まさか澪ちゃんが恋に落ちる、なんて……。」

 お弁当を食べている最中にいっちゃんが感慨深げに言う。